アニメ『犬夜叉』に登場する最大の敵・奈落。
冷酷非道な悪役として知られる彼ですが、物語を深く読み解くほどに、その姿はただの悪では語れない複雑さを帯びています。
なぜ彼はそこまで桔梗に執着し、なぜ数々の悪事を重ねながらも、どこか哀れさを感じさせるのでしょうか?
「犬夜叉 奈落 かわいそう」と検索したあなたが抱くその疑問には、彼の過去や心の闇、そして叶わなかった願いが深く関わっています。
本記事では、「奈落がかわいそうな理由」や「奈落は何がしたかったのか」をはじめ、「最終形態」や「奈落決戦」など、物語の核心に迫る場面を徹底考察。
「神楽」や他の「分身」たちとの関係、そして「奈落 桔梗」を巡る悲しき因縁についても掘り下げます。
さらに、彼の内面を見事に演じきった「声優」の演技にも注目。
読むことで、きっと奈落というキャラクターの新たな一面が見えてくるはずです。
- 奈落が「かわいそう」とされる理由
- 奈落が本当に望んでいたこと
- 桔梗との関係にある悲哀や執着
- 奈落の誕生や最期に込められた背景
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 奈落(ならく) |
正体 | 人間「鬼蜘蛛」と無数の妖怪が融合した半妖 |
初登場話 | アニメ第18話(原作:第127話付近) |
種族 | 半妖(元は人間:鬼蜘蛛) |
年齢 | 不明(数十年以上は存在していると推定) |
性別 | 男性 |
能力・特徴 | 変化、瘴気の操作、結界展開、分身体の作成、高速再生、四魂の玉の操作など |
性格 | 冷酷・狡猾・執着心が強い・計算高い |
主な目的 | 四魂の玉の完成と完全な妖怪になること |
本当の願い | 桔梗の心を手に入れること |
分身 | 神楽・神無・白童子・赤子など多数 |
弱点 | 結界を破られること、桔梗への執着心 |
最期 | 四魂の玉の中で浄化され、消滅 |
声優(日本語) | 森川智之(奈落)、家中宏(鬼蜘蛛) |
関連人物 | 桔梗(執着対象)、犬夜叉(宿敵)、神楽(分身)、かごめ(因縁の相手) |
犬夜叉:奈落がかわいそうと感じる理由
- 奈落がかわいそうな理由は何か
- 奈落は何がしたかったのかを考察
- 「わしはただ桔梗の心が欲しかった」
- 奈落と桔梗の関係に見える悲哀
- 奈落の正体である鬼蜘蛛とは
奈落がかわいそうな理由は何か
奈落がかわいそうとされる最大の理由は、自分自身の本当の気持ちに気付けず、苦しみ続けたことにあります。
奈落というキャラクターは、もともと鬼蜘蛛という瀕死の野盗が、多くの妖怪と融合することによって生まれました。この鬼蜘蛛は、桔梗という美しい巫女に救われ、介抱されるうちに激しく恋焦がれるようになります。しかし、身体が自由に動かず絶望的な状況だったため、桔梗への想いは次第に歪んだ欲望に変わってしまいました。多くの妖怪を取り込み、強力な半妖「奈落」として生まれ変わった後も、奈落は鬼蜘蛛の心を引き継ぎ、桔梗への複雑で矛盾した感情にずっと囚われてしまいます。
単純に桔梗を愛する気持ちだけなら、奈落もこれほど苦しまなかったかもしれません。しかし、取り込んだ妖怪たちの憎悪が混ざり合った結果、桔梗に対しては愛情と憎しみが同時に存在するようになりました。これによって、奈落自身が何を望んでいるのかすら分からない状態が続いたのです。自分の意思と関係なく「桔梗を愛する心」と「桔梗を憎む心」という相反する二つの感情に支配されてしまった彼は、その苦しみから逃れるために桔梗を葬ろうとさえします。
奈落が不幸だったのは、本当に望んだのが「桔梗の愛」だったにもかかわらず、最後までその望みを明確に自覚できなかったことです。最期になって「わしはただ桔梗の心が欲しかった」と告白しますが、これも死の直前のことであり、もはやどうすることもできませんでした。奈落の行動や悪事は到底許されるものではありませんが、自らの意思に関係なく生み出され、望まぬ感情に翻弄され、最終的に孤独に消えていった彼の人生には、同情を禁じ得ない部分があります。
このような理由から、奈落という存在を「かわいそう」と感じる読者は少なくありません。もちろん、奈落は数々の悪事を働いてきたキャラクターであり、同情の余地がないという意見もあります。ただ、彼の行動の裏側には、本人さえもどうすることもできなかった悲劇的な背景があったことは確かです。

そないなるまで苦しんでたんか…切ないわぁ
奈落は何がしたかったのかを考察
奈落の行動や目的は非常に複雑ですが、一言で言えば「桔梗の心を手に入れること」でした。
奈落は物語の序盤から中盤にかけて、完全な妖怪になることや四魂の玉を完成させることに執着していました。しかし、これらは彼が抱える真の望みではなく、表面的な目的に過ぎなかったのです。なぜ奈落が四魂の玉を手に入れ、完全な妖怪になろうとしたのかと言えば、それは自身の中にある「桔梗への想い」を完全に断ち切りたいという願望の現れでした。桔梗への執着こそが自分自身を弱く、惨めな存在にしていることを奈落自身が無意識のうちに感じ取っており、その感情を捨て去るために完全な妖怪になる必要があると考えたのです。
しかし皮肉にも、奈落が本当に欲していたものは桔梗その人の愛情でした。彼は愛情表現の仕方を知らず、自分の欲望や憎しみを通じてしか桔梗と向き合うことができませんでした。実際、桔梗を苦しめたり、犬夜叉との仲を裂こうとしたのは、ただ単に桔梗の心を自分に向けさせたいという歪んだ欲求が理由です。
例えば、奈落は度々桔梗を襲撃しましたが、本当に彼女を亡き者にしたいならもっと早く簡単に殺す機会がありました。しかし実際には何度も躊躇し、彼女を殺すことができませんでした。これこそが、奈落自身の葛藤をよく表しています。彼は桔梗を憎んでいると自分に言い聞かせながら、心の奥底では彼女の愛を求め続けていたからです。
物語終盤で奈落が言った「わしはただ桔梗の心が欲しかった」という台詞は、彼が自分の真の目的を初めて自覚した瞬間でした。これまでの目的がいかに自分自身を欺いてきたかに気付いたのです。結局、奈落は桔梗を愛しながらもその愛を受け入れられず、自分自身の感情から逃げ回るために多くの人を傷つけました。
いずれにしても、奈落は桔梗の心を求めながら、それを素直に認めることができずに葛藤し続けました。その結果が、彼の悲劇的な運命を生み出した最大の原因と言えるでしょう。

ほんまは桔梗の心が欲しかっただけやなんてな…
「わしはただ桔梗の心が欲しかった」

「わしはただ桔梗の心が欲しかった」という奈落の台詞は、物語終盤において彼の内面を最も端的に表した言葉です。この一言は、それまでの奈落の行動の多くに対する裏付けであり、読者の心に深い余韻を残しました。
表面的には、奈落は四魂の玉を手に入れ、完全な妖怪になることを目指して行動していました。しかし、その根底には「桔梗の心を自分のものにしたい」という感情が隠されていたのです。この台詞が発せられたのは、彼が目的と信じていたものを手に入れたにもかかわらず、心の中に空虚さだけが残った瞬間でした。つまり、彼の本当の望みは、力でも地位でもなく、桔梗の愛情だったということが、このセリフによって明かされたのです。
一方で、この発言には皮肉も含まれています。奈落は桔梗の心を得るどころか、自らの手でその可能性を潰してしまったからです。桔梗を利用し、裏切り、命までも奪った奈落には、もはや彼女の心を手に入れる資格など残されていませんでした。だからこそ、この台詞は哀しみと後悔を含んだ、限りなく人間らしい叫びに聞こえます。
ここで注意したいのは、奈落が抱いていたのは純粋な恋心ではないという点です。彼の「欲しい」は、対象の意思や尊厳を無視した、独占欲にも似た執着でした。そのため、仮に桔梗が奈落に心を向けたとしても、それは本当の意味での愛にはならなかったでしょう。欲望に基づく一方的な想いでは、他人の心を得ることなどできないのです。
この言葉をもって奈落を全面的に肯定することはできません。しかし、どこまでも哀れで、理解されないまま消えていく存在として、奈落というキャラクターの深みを象徴する台詞であることは間違いありません。

この一言に、全部詰まってる気するわ…
奈落と桔梗の関係に見える悲哀

奈落と桔梗の関係には、深い悲哀が根底に流れています。二人の間には恋愛というにはあまりに歪んだ関係があり、そこには愛と憎しみが複雑に絡み合っていました。
桔梗はかつて、重傷を負った野盗・鬼蜘蛛を人として哀れみ、命を救おうとしました。しかし、鬼蜘蛛が抱いた感情は感謝や敬意ではなく、彼女を手に入れたいという浅ましい欲望でした。そしてその感情は、やがて奈落という存在の核になってしまいます。桔梗の善意がきっかけで、最悪の存在が生まれてしまったこと自体が、すでにこの関係の悲劇を物語っています。
奈落が桔梗を憎んでいたのは、彼女が犬夜叉に心を寄せていたからです。その嫉妬心が、犬夜叉と桔梗を引き裂き、物語の悲劇の発端となりました。さらに奈落は桔梗を亡き者にしようとする一方で、彼女のことを決して忘れることはありませんでした。自ら殺した相手になおも心を奪われているという矛盾は、奈落という存在をより悲劇的にしています。
桔梗の側から見ても、この関係は救いようがないものでした。彼女は命を救った相手に裏切られ、人生を狂わされました。しかもその相手は、死してなお彼女に執着し続ける存在となって生き延びたのです。このような状況で、桔梗が奈落に少しも心を許すことがなかったのは、当然の結果だったといえるでしょう。
奈落が桔梗に求めていたのは、彼女の意思を伴わない愛でした。しかし、愛とは本来、相手の気持ちを尊重し、対等であることが必要です。その点で、奈落の想いは愛ではなく、執着であり呪縛に近いものでした。
このように考えると、奈落と桔梗の関係にあるのは、希望ではなく絶望に近い感情です。どれほど想いが強くても、正しく伝えられず、受け入れられなければ、それはただの孤独を生むだけです。このすれ違いと断絶こそが、奈落と桔梗の関係に潜む最大の悲哀だといえるでしょう。

愛してたのに、憎んでもうたんか…やるせないで
奈落の正体である鬼蜘蛛とは
鬼蜘蛛(おにぐも)は、漫画『犬夜叉』に登場する悪役・奈落の核となった存在であり、その正体を知ることで奈落というキャラクターの悲劇性がより深く理解できます。奈落は最初から存在していたわけではなく、この鬼蜘蛛という人間の心と身体を土台として、多くの妖怪が融合することで誕生しました。
鬼蜘蛛はかつて、全身に重度の火傷を負い、動くこともままならない瀕死の野盗でした。彼は村の巫女である桔梗に匿われ、手厚い看病を受けます。しかし、彼の心に芽生えたのは感謝ではなく、彼女を自分のものにしたいという執着心でした。このときすでに、鬼蜘蛛の内面には人間離れした邪悪な欲望が渦巻いていたのです。
やがて鬼蜘蛛は、自らの体を動かす力を得るため、妖怪たちの力を受け入れます。これにより、彼の体には無数の妖怪が取りつき、融合し、半妖である奈落が誕生します。つまり、鬼蜘蛛の肉体と欲望が、奈落という存在の出発点だったというわけです。
鬼蜘蛛が特異なのは、人間でありながら妖怪に匹敵するほどの邪気を持っていた点です。作中でも奈落自身が「鬼蜘蛛は邪気の塊である」と語っており、その異質さがうかがえます。ただし、この「邪気の強さ」は生まれつきのものではなく、人を傷つけ、欲にまみれて生きてきた末の積み重ねが生んだものと考えられます。
こうした背景から、鬼蜘蛛は物語において「自らの欲望で自分も他人も破滅させる人間の象徴」として描かれています。奈落がどれだけ強力な存在になっても、その根底には鬼蜘蛛の執着と邪悪な感情が常に根付いていたため、奈落自身も桔梗への想いから逃れられませんでした。
さらに言えば、奈落は何度も自分の中から鬼蜘蛛の心を切り離そうとします。その結果「無双」という姿で一時的に外部に出される場面もありますが、最終的にはまた奈落の体内に戻されてしまいます。つまり、鬼蜘蛛の心がなければ奈落は存在を保てないのです。
このように、鬼蜘蛛とは単なる過去の人間ではなく、奈落の人格と存在そのものに影響を与え続けた根源的な存在です。そしてその欲望と憎しみが混じり合った性質が、奈落というキャラクターを誰よりも複雑で、悲劇的な存在にしているといえるでしょう。

欲にまみれた人間が、妖怪になってしもたんやな

犬夜叉:奈落のかわいそうな最期とは
- 奈落決戦で明かされた本心
- 奈落の最後に見せた感情とは
- 奈落の最終形態が示す悲しみ
- 奈落の分身たちが抱えた葛藤
- 奈落一派の中での神楽の役割
- 奈落の声優が表現する内面
奈落決戦で明かされた本心

物語のクライマックスである「奈落決戦」では、これまで謎に包まれていた奈落の本心が明確に描かれます。それまでの奈落は、冷酷で狡猾な敵として描かれており、四魂の玉を完成させて完全な妖怪になることを最大の目的として行動しているように見えました。しかし、最終局面で語られた奈落の言葉によって、その本当の願いはまったく別のところにあったことが明らかになります。
戦いの最中、犬夜叉たちとの壮絶な対決を繰り広げながら、奈落はついに心の奥底にある願いを口にします。それが「わしはただ桔梗の心が欲しかった」という一言でした。この台詞は、読者や登場人物にとって非常に衝撃的なものであり、奈落のこれまでの言動がすべて繋がる鍵となります。
ここで重要なのは、奈落が望んでいたのは力や支配ではなく、桔梗というひとりの女性からの心でした。それにもかかわらず、彼はその想いに素直になることができず、桔梗を苦しめ、命を奪うという矛盾した行動をとってしまったのです。彼にとって四魂の玉の力は、桔梗への執着心を断ち切るための手段であり、それが目的そのものになっていたわけではありません。
また、奈落は四魂の玉を手に入れたあと、かつてのような狂気に満ちた喜びを見せることはありませんでした。むしろ、虚無に包まれたような様子を見せており、四魂の玉を手にしても「なにもない」と答えた姿には、達成感や勝利の実感が欠けていました。このことからも、彼がどれほど本来の願いから逸れてしまっていたかがわかります。
このように「奈落決戦」は、単なるバトルの場面ではなく、奈落というキャラクターが自分の感情と向き合い、本当の望みを吐露する重要な転機でした。その本心がようやく明かされたことで、彼の行動の裏にあった孤独と悲しみが浮き彫りになったのです。

心の奥底では、ずっと叫んでたんかもしれへんな
奈落の最後に見せた感情とは

奈落の最期は、彼が初めて「感情」というものを真正面からさらけ出す場面でもあります。これまでの奈落は、敵を嘲り、他者の絆を断ち切ることに快楽を覚えるような冷酷な存在として描かれていましたが、最後の最後に彼は、他人ではなく自分自身の内面と向き合うことになります。
桔梗を完全に失い、四魂の玉の中で孤独とともに在る奈落は、これまで見せたことのない表情を浮かべます。それは、怒りや憎しみではなく、どこか空虚で、そして穏やかにも見える表情でした。その瞬間、奈落の心には戦いや支配への執着ではなく、「桔梗と共に在れなかった」という深い後悔と諦めが残されていたことがうかがえます。
この場面において特徴的なのは、奈落が涙を流すでもなく、叫ぶでもなく、静かに自分の過ちを受け入れている点です。それまであれほど自己肯定にこだわり、他者を操ってでも生き延びてきた彼が、最期には何も抗わず、ただ桔梗を思いながら消えていく姿は、敵であることを超えて人間らしい一面を感じさせます。
また、奈落は桔梗の生まれ変わりであるかごめによって浄化されることで、ついに終焉を迎えます。この演出は、皮肉でありながらもどこか救いのある展開です。桔梗から得られなかった心が、同じ魂を持つかごめによって清められたことで、奈落の魂はわずかにでも安らぎを得たのかもしれません。
このように、奈落の最期には「諦め」「後悔」「静寂」といった、これまでの彼には見られなかった感情が表れています。それは彼が四魂の玉の力を得ても、桔梗を手に入れられなかったという現実をようやく受け入れたからでしょう。最後に見せたその姿は、強大な悪としての奈落ではなく、ただ一人の悲しい魂の姿でした。

最後の最後に、ほんまの気持ちが見えたんやなぁ
奈落の最終形態が示す悲しみ
奈落の最終形態は、物語の終盤で彼が四魂の玉と完全に一体化した際に現れる姿です。全身が黒く硬質な甲冑のような外見になり、瘴気を自在に操る強大な存在へと変貌します。しかし、その圧倒的な力とは裏腹に、奈落の内面はこれまでになく空虚で、孤独に満ちていました。
最終形態となった奈落は、一見すると無敵の化け物のように見えます。実際、攻撃を受けても即座に再生し、異次元の攻撃すら通じない耐性を持っていました。しかし、彼は戦いの中でしきりに「なにもない」と語っており、それはまるで自らの存在そのものを否定するかのようでもありました。
このときの奈落は、すでに自分の目的を見失っていたのです。かつては四魂の玉を手に入れ、完全な妖怪となることが目標でしたが、それを叶えた後には虚しさしか残りませんでした。なぜなら、奈落が本当に求めていたのは「桔梗の心」であり、それは決して四魂の玉で手に入るものではなかったからです。
さらに、最終形態において奈落は、かつて見せていたような策略や警戒心をほとんど失っています。ただ力で圧倒するだけの存在となり、その姿はもはや意思ある生物というより、目的を失った怨念の塊のようでした。
このように考えると、奈落の最終形態は「力の象徴」であると同時に、「望みを失った者の末路」でもあります。全てを手に入れたはずなのに、心の空洞を埋めることはできなかった。その姿には、敵でありながらもどこか哀れみを感じずにはいられません。
つまり、奈落の最終形態は、単なるバトル演出を超えて、彼の内面の孤独や絶望を視覚的に表現したものだと言えるでしょう。力を極めた者の、最も弱い姿がそこにありました。

強うなっても、心はずっと泣いてたんやろな
奈落の分身たちが抱えた葛藤

奈落は物語の中で、自らの体の一部から複数の分身を生み出しています。これらの分身たちは、ただの道具や兵士ではなく、それぞれが独自の感情や葛藤を持つ存在として描かれています。特に代表的な神楽や赤子、白童子といった分身たちには、人間味あふれる苦悩が込められています。
例えば、風を操る分身・神楽は「自由」を切望していました。奈落の命令に従いながらも、常にその支配から逃れたいと考えており、最終的には奈落に反旗を翻します。彼女は心臓を奈落に握られているという絶対的な制約のもとで生きていましたが、それでも「自由な風」として生きることを夢見ていたのです。その思いは、奈落の支配下にある他の分身たちに共通するテーマでもありました。
一方で、赤子や白童子のように、奈落の核となる「鬼蜘蛛の心」を色濃く継いだ分身たちは、むしろ奈落自身の精神的な投影とも言えます。彼らは奈落の中に残る人間的な弱さや執着を体現しており、ときに奈落に疑念を抱いたり、逆に主導権を握ろうとしたりと、複雑な心理を見せました。
こうした分身たちが抱える葛藤は、奈落という存在がいかに不安定で、内面の矛盾を抱えたキャラクターであるかを際立たせています。奈落自身が目的を見失い、自分の中の人間らしさを否定しながらも、それに引きずられていく様子が、分身たちの姿を通じて描かれているのです。
そして何より重要なのは、これらの分身たちが決して「単なる悪」ではないということ。彼らはそれぞれの意思で苦しみ、選択し、時に最期を迎えることで、単なる「敵キャラ」以上の深みを与えられていました。最終的にその多くは奈落の手によって消されていきますが、その中にあった「自分とは何者か」という問いは、奈落自身にも跳ね返ってきていたのではないでしょうか。
奈落の分身たちは、彼の内面を映し出す鏡であり、同時に彼が抱える「人間でありたくない」という苦悩の具現でもあったのです。
奈落一派の中での神楽の役割
神楽は、奈落が自らの体から生み出した「分身」の一人でありながら、他の分身とは一線を画す存在です。風を操る妖怪として誕生した彼女は、奈落一派に属していたものの、当初からその支配に完全には従わない、極めて自我の強いキャラクターでした。奈落が統制する軍団の中で、神楽の立ち位置はとてもユニークであり、物語を進行させる上でも重要な役割を担っています。
神楽の最も大きな特徴は、「自由」を強く求めていたことです。彼女は生まれた瞬間から奈落に心臓を握られており、逆らえば命を奪われるという絶対的な支配下にありました。それでも、神楽は奈落の命令に従いつつ、幾度となく裏切りを画策し、独立しようと動き続けます。その姿は、自由意志を持たずに奈落の道具として機能していた他の分身たちとは対照的であり、人間味あふれる存在として多くの読者の心を打ちました。
さらに神楽は、奈落一派内だけでなく、犬夜叉や殺生丸といった主要キャラクターたちとも関係性を持つことで、物語全体に深みを加えました。特に殺生丸とのやりとりにおいて、彼女は一種の感情的交流を見せており、それまで冷酷に見えていた神楽の内側にある「弱さ」や「切なさ」が描かれます。これは、奈落一派の一員でありながら、ただの悪役ではないことを象徴する場面でもあります。
また、神楽の行動は奈落に対する不信や反抗を具体的に示すことで、奈落というキャラクターの恐怖政治的な支配体制の脆さを浮き彫りにしています。支配を強めれば強めるほど反発を招くという皮肉を、神楽という存在を通して表現していたとも言えるでしょう。
最期には自由を得た直後に命を奪われるという皮肉な運命を辿りますが、そのとき見せた安らかな笑みは、彼女が最後まで「自由な風」であろうとした証です。神楽は奈落一派の中で、唯一と言ってもいいほど自立した感情と目的を持ち続けた存在であり、物語における「抗う者」として強い印象を残しました。

神楽の風、最後まで自由を願ってたんやな

奈落の声優が表現する内面

アニメ『犬夜叉』における奈落の声を担当したのは、主に森川智之さん(人見蔭刀の姿)、そして鬼蜘蛛としての姿では家中宏さんです。この2人の声優が演じ分けたことで、奈落というキャラクターはより立体的に、そして深みのある存在として視聴者に印象付けられました。特に、声の演技が奈落の「内面」を表現する重要な要素となっていた点に注目するべきです。
まず森川智之さんが演じる奈落は、非常に落ち着きがあり、冷酷で知略に長けた悪役としての存在感を強く放っています。しかしその裏には、桔梗への執着や人間の心への葛藤が潜んでいることを、わずかなトーンの変化や言葉の間で表現しており、聞き手に不穏さと哀しさの両方を感じさせる巧みな演技が光ります。特に桔梗との対峙シーンや、自身の本心が露わになる終盤では、声の深みが奈落の脆さや孤独を際立たせています。
一方で、奈落の原点である鬼蜘蛛を演じる家中宏さんは、より粗野で不気味な印象を持たせています。人間としての欲望にまみれた未成熟な存在でありながら、桔梗への異常な執着を語る声には、生々しい感情がにじみ出ています。この鬼蜘蛛の声が、後に奈落の根底に残り続ける「人間の心」の原型として作用しており、声の変化を通じてキャラクターの二面性を理解することができます。
また、演出としても奈落が姿を変えるたびに声の質が微妙に異なることがあり、それは奈落自身の心理状態や変化を表現するための工夫でもありました。表面的には常に冷静で計算高い存在でありながら、内側では激しい感情が渦巻いているーーそのギャップを声優が繊細に演じ分けたからこそ、視聴者は奈落の内面を「言葉以上に」感じ取ることができたのです。
つまり、奈落というキャラクターの多面性や哀しさ、冷酷さは、声優の表現力によって一層際立たせられていました。特に物語終盤における弱音や後悔のこもった台詞は、演技によって奈落の「かわいそうな一面」が視聴者に強く印象付けられた場面であり、声の力が物語に与えた影響は非常に大きいものだったと言えるでしょう。

声だけでこんなにも感情伝わるんやなぁ…すごいわ
犬夜叉:奈落がかわいそうと感じる理由を総まとめ
- 奈落は自分の本当の気持ちに気づけず苦しみ続けた存在
- 元は鬼蜘蛛という瀕死の野盗で、人間らしい感情を持っていた
- 桔梗への愛と憎しみの相反する感情に翻弄された
- 四魂の玉の力を求めたのは桔梗への執着を断ち切るためだった
- 桔梗を傷つけながらも愛し続ける矛盾に苦しんでいた
- 「わしはただ桔梗の心が欲しかった」という告白が本心を物語る
- 愛情ではなく一方的な執着心を抱いていた点が悲しい
- 鬼蜘蛛の心が奈落の人格に強く影響していた
- 最後まで桔梗の愛を得られず孤独に消えた
- 奈落の分身たちもそれぞれ葛藤を抱えていた
- 神楽などの分身は自由を求めて奈落に反抗した
- 最終形態は力と虚無の象徴であり目的の喪失を示していた
- 声優の演技によって奈落の内面の悲哀が表現されていた
- 決戦の場面でようやく自分の本心に気づく描写がある
- 奈落の行動の裏には、制御できない感情の渦があった